2024/06/17

「体験」が、成長に「きっと良い!」をもっと後押しする調査報告

「子どもにできるだけたくさん色々な体験をさせてあげたい!」

親になった瞬間から感覚的にそう思われる方が多いことと思います。

では、体験の何が良いのでしょうか?なぜ、良いと思われるのでしょうか?

肌感覚で大切にしていることこそ、調査や研究結果をもとに、もっと自信をもって取り組みたいですよね。

今回は、「体験」が子どもたちの成長に与える影響についてみていきます。

結論、「体験」は子どもの成長にとって好影響です。多様な体験が無理のない範囲内でできると良いですね!

文部科学省の調査から

令和2年度体験活動等を通じた青少年自立支援プロジェクトの『青少年の体験活動の推進に関する調査研究報告書』という文科省が行なった追跡調査報告を軸にご紹介します。

調査をするのに、毎年、異なる保護者や子どもたちに調査を行ったところで比較分析が難しいのですが、今回の調査は、長期間、同一の保護者と子どもたちを調査している点で、より良い分析が行えています。

調査報告では、以下のキーワード(キーワード全体を「意識等」と整理)をもとに、項目等を立てて分析されています。

向学的な意識:学校の授業や勉強が楽しい

外向性:人と関わる力、幅広い視野、許容、社会性、観察する力

新奇性追求:主体性、ワクワク感、興味・関心、挑戦

感情調整:他者への感謝、思いやり、社会貢献、忍耐力、自立・自律

肯定的な未来志向:将来への夢や希望、職業意識

心の健康:ストレスの軽減、身体機能

今回の調査では、体験活動を含め、読書、遊び、お手伝いなどについて、子どもの成長への影響が調べられています。

体験活動や読書などの効果

体験活動とは・・・自然体験(キャンプ、登山、川遊び、ウインタースポーツなど)、社会体験(農業体験、職業体験、ボランティア)、文化的体験(動植物園・博物館・美術館見学、音楽・演劇鑑賞、スポーツ観戦など)を指します。

早速、体験活動、読書、遊び、お手伝いを含めた調査結果を見てみましょう!

結果は以下の通りでした↓

体験

自然体験・・・自尊感情(自分を肯定したり、自信をもったりする)や外向性(他の人と関わり、幅広い視野等)に好影響

社会体験・・・小中高生時期に授業や勉強が楽しいといった意識(向学的意識に好影響

文化的体験・・・すべての意識に好影響

体験は、非常に良い印象を受けますね!

特に文化的体験は、全ての意識に対して良い影響があるとは!!

読書

読書も良いとされています。結果はいかに。

読書を多くすることで、新しいことに興味を持ったり(新規性追求)、自分の感情を調整したり(感情調整)、将来に対してポジティブ(肯定的な未来志向になったりしやすくなるようです。

また、小中高校生時期に、授業や勉強が楽しいといった意識(向学的意識にも良い影響があるようです。

遊び

遊びは、遊び相手にも関係があるようです。

異年齢(違った年齢)の子どもや家族以外の大人(例えば、地域の人、GO Lab.ジェネレーターなど)など、色々な人とよく遊ぶ機会が多いと、自尊感情や外向性等に良い影響があるようです。

ちょうど、GO Lab.は学校内に設置の放課後児童クラブではないため、今のところ、異年齢、異なる学校、先生とは違った大人など様々な人と関わる機会が多くあります。

お手伝い

「お手伝いしてよ!」と感覚的に言ってしまいますよね。

それも成長にはやはり良いようです。

お手伝いを多くすることで、自尊感情や外向性、感情調整、将来へのポジティブさ(肯定的な未来志向)などの全ての意識で良い影響がありました。

お手伝い、良い効果を発揮していますね!

結果の総括

小学生の頃に上記の体験活動などを多くしていた子どもは、数年後の高校生の頃に自尊感情(自分に対して満足する、肯定的または否定的なものを広く受け入れられる感情)、精神的な回復力(新たなことへの興味関心、自分の感情を整理する、将来に対してポジティブ)などの項目が高くなりやすかったことがわかりました。

また、小学生の頃に、異年齢(違う歳)の人とよく遊んだり、自然でよく遊んだりしたことがあると、同様の結果が得られています。

経験した内容(体験活動、読書、お手伝いなど)の種類によっても結果が違う傾向が見られるため、様々な経験を積んでおいた方が良いと言えそうです。

とりあえず、小学生での「体験」、がその後、結構長期にわたって生きてくる、と言えますね!

ちょっと嬉しいですよね。

家庭の経済状況等によって変わるんじゃないの?

そう思われたかもしれません。

体験って、今の時代、高価になってきていますよね。

安心して何かをできる場所が減ってきているし、体験をそれこそさせようとすると結構お金が必要だと感覚的に思います。

さて、そういった家庭の経済状況や家族構成、環境等を考え、体験の影響を分析が行われました。

結果は、小学生の頃によく体験をしていると、家庭環境に関わらず、成長に良い影響が見られるようです。

また、例えば、家庭の経済状況があまり良くなくても、自然体験ができる機会が多くあると、成長に好影響が見られることも分かりました。

全体的に見ても、やっぱり自然体験って、すごく良いんですよね。

自然に囲まれて暮らしている人は、子どもの成長の視点で見れば、実はそれは最高に恵まれているということがい言えそうですね。

ちなみに、少し脱線しますが、体験には格差が生じている部分もあります。

先ほど述べたように、家庭の経済状況、社会的に置かれた環境によって、子どもたちの体験格差が生じていることを示した研究もあります。

一度も地域のお祭りやイベントなどに参加したことがない子どもたちも結構な割合で存在します。

それは、親のそれまでの経験であったり、経済状況であったりが関わっています。詳しくは、『体験格差』(参考文献に記載しております)をお読みください。

まとめ

さて、今回は、「体験」をターゲットに調査結果を見てきました。

「体験」が良いとは肌感覚で分かっている人がおそらく多くいる中で、それを後押ししてくれる結果であったと思います!

「体験」は、子どもの成長にとって、良い影響があるのです!

近くの山に登ったり、自然豊かな場所でゆっくりしたりするだけでも立派な体験だと思います。

自然体験や異年齢の人と遊ぶ、お手伝いなどは、無理なくできるかもしれませんね。

GO Lab.では、体験が日頃の放課後からまたは長期休暇中に無理のない範囲でできます!

家でしにくいことも、当施設ならお手伝いできることもあると思います。

時には思いっきり汚れたり、ケガをしたりすることもあります。

そういった経験も経ながら、子どもたち発信の体験を大切に、大人も子どもも日々成長しています。

(記事執筆:足立 隆弘)

引用・参考文献

文部科学省(2021)令和2年度「体験活動等を通じた青少年自立支援プロジェクト」青少年の体験活動の推進に関する調査研究報告書.

ピーター・グレイ,吉田新一郎(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ-自立した学びてを育てる-. 築地書館.

今井悠介(2024)体験格差. 講談社現代新書.

古荘純一(2009)日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか-児童精神科医の現場報告-. 光文社新書.